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ことばと学びの宇宙ホーム > 国語の世界ホーム > 学習指導要領【国語科編】 > 昭和26年(6)

学習指導要領【国語科編】

昭和26年 改訂版
 

中学校 高等学校 学習指導要領 国語科編(試案)
文部省

第二章 中学校の国語科の計画

三 読むこと

(一)中学校における読むことの学習指導の意義

  〔中学校における読むことの学習は非常に広くなった。〕
 以前の国語教育では、教科書の読解に中心がおかれていた。ところが、今日、読むことはわれわれが目に触れるあらゆるもの、新聞・雑誌の類から、広告・掲示・ポスター・手紙など、およそ文字に表されて目に触れるすべてのものを読んで、実生活上の用をたし、文化的生活に発展させていかなければならない。これからの国語教育では、これら多くの価値ある資料を、学習の中にとりこむようにしなければならない。
 以前は、おとなの立場から第一級と考えられる文学的作品が重んじられていて、生徒の興味や能力に合わない高い程度のものを精読探求するという技術が中心であった。しかし、読むというのは、娯楽のため軽い読み物を読むとか、ある調査のため必要なところだけを読みとるようなことをも含む、広い働きである。
 したがって読むことの学習は、内容を読み解くということにとどまらず、書物をどのようにして選ぶか、読んだことをいかに役だてるか、書物を扱う望ましい態度や習慣をどう伸ばすかなどの基本的な内容を持たなければならない。この基本的な線は中学校において、ぜひとも習得しなければならない。
 しかし、文学の楽しみを知ることももちろんたいせつなことであって、これによって民主主義の教育が目標とする教養を高め、情操を養い、個性を伸ばすことが必要である。
 したがって、小学校で得た基本的な読書力をさらに伸ばして、書物や新聞・雑誌その他の正しい、効果的な利用、すばやい着実な読解の能力を高める必要がある。
 教養と娯楽のためには、広く古今東西のよい読み物に接し、思想を練り、趣味を高め、書物をとおして、それぞれの人生観を持つ上の助けとしなければならない。
  〔読むことの学習指導は、広い計画を持たなければならない。〕
 右に述べたように、読むことの学習の仕事はずいぶん広いから、その目的を達成するために読むことの学習指導は広い計画を持たなければならない。読書を楽しむとか、よい本と悪い本とを見分けるとかは小学校でも目標としてきたことで、それはある程度達せられたのであるが、それをいっそう高めるとともに、もっと広い各種の技術を身につけさせなければならない。
 小学校で身につけた文字や語句の理解力にとどまらず、語句の使い方、文の種類や構成などにも知識・理解を持つことが必要である。書かれた内容によって、それらは一々違うことを理解し、各種の表現になれるようにならなければならない。
 内容をすばやく読みとって行く技術を伸ばさなければならない。辞書や参考書を利用するときなど、必要なところを、すばやく的確に拾い読みする技術もつけなければならない。
 論理的な筋道をたどって、まとめながら読んでいくことも、中学生に必要な力である。全体をまとめて読む力には、小学校よりもいっそう重点をおかなければならない。
 そのほかに、古典などのような特殊のものを調べる技術、文学のいろいろの種類の材料に即する読みの技術、外国文学の読解などがあり、正しい表記法や、字体や、カタログ・見本・時間表・辞典・字引、特定の印刷物の使用についての技術を身につけるような学習が計画されなければならない。

(二)中学校生徒の読む経験には、どんな種類があるか
 書物というものは、知識・情報を供給するばかりでなく、教養や娯楽を与えるもとである。

〔知識や情報をうるために読む場合。〕
 これは、何か知りたいこと、わからないこと、調べたいことがあって、新聞や辞書や参考書などを利用する場合である。この場合は、必要なものを見いだして正しく速く必要な部分を読みとったり、細かに詳しく読んだりして、自分の知りたいと思うことの目的を達するのである。
 掲示を読む、広告を読むなどは、主として情報を得るための読みである。

  〔趣味のため娯楽のために読む場合。〕
 文学作品の鑑賞や、余暇を利用するための読書がこれにあたる。中学生になれば、興味ある古典や外国の文学作品などを読んで教養を高めていく。それとともに、てごろな軽い読みものや小説などを読んで楽しむものである。

(三)中学校生徒の読むことの実態
 読むことについては、聞くことや話すことに比べて、調査がしやすいために、各種の方法が行われ、多い名調査もだんだん試みられている。読む能力の科学的な測定や調査などの研究の成果は、今後大いに採用しなければならないが、ここに、各教室の実態に即する指導計画を立てるために必要な調査を考えてみる。

  〔読みに関する調査の範囲と方法には、通常次のようなことが行われている。〕

  1 読み物調査
   イ 読んだ本のリストを調査する。印象に残っている本をあげさせる。好きな本、おもしろかった本などについて報告させる。
   ロ 図書管理用の程度、本を買うこづかい、本の貸借の様子などを調べる。

  2 読書の実際
   イ 図書館における態度、本の取扱方などを観察する。
   ロ 読後感などを話し合ったり、記録させたりする。

  3 読みの基礎的能力
   イ 文字を読む力、語いの力などのテストをする。
   ロ 音読および黙読における文章読解の速度と読んだことの理解の程度を調べる。
   ハ 文学の鑑賞力を調べる。

  〔読むことについては、個人個人の力や条件をじゅうぶんに調べなければならない。〕
 読む力は、生徒個人個人によっていろいろである。地域的・家庭的環境の差、身体的条件・知能の程度によって大きな影響を受ける。だから、一学級や一学年を全体として調べるほかに、個人について、調査をすることがたいせつである。
 環境については、父兄の教養の程度とか文化的環境の度合いとかを調べるほかに、職業・経済事情・交友・過去の経験の範囲などを考えに入れる。
 弱視・近視などは早く発見しなければならない。本の位置・姿勢・目の動かし方などを注意深く観察して診断する。これら本質的な条件のほか、疲労や倦怠の度合、持久力の不足などの一時的な身体障害も注意しなければならない。
 知能と読む力との相関は、かなり高いといわれている。知能が低いために、声を出して読んではいるが、内容はわかっていないという生徒も多い。
 適当な読み物を選ばせるためにも、右のようなことを調べておく必要がある。

  〔中学生の読むことの一般的特質はどのようであるか。〕

  1. 当用漢字別表は、文脈中においては、だいたい読めるようになっているが、中にはじゅうぶん読めない生徒もある。日常必要な当用漢字について理解のじゅうぶんでない者がある。
  2. 語いは豊かになっているが、生徒によっては、著しくかたよっており、ことに五感のつかみ方などがまだじゅうぶんでない。
  3. やさしい文語の文、古典などについても、知識がじゅうぶんでなく、理解のしかたも知らない者が多い。
  4. 唇読・指読はほとんど無くなっている。眼球運動もなめらかで行を追うこともだいたい順調である。
  5. 好きな本は一気に読み、冒険ものや少女小説は週に数冊読むが、価値の高いものに真剣に取り組む態度はできていない者が多い。
  6. 要点をつかんだり、細かな点に注意して読む力が欠けていることもある。
  7. 詩歌などに興味を持つ生徒もできてくるが、正しい鑑賞のしかたはじゅうぶんとはいえない。
  8. 分析的に読んだり、全体をまとめたりする力は不足している。
  9. 良書の選択が適当でない。適切な読書の時間を見いだすことができない。
  10. 辞書の使用にはひととおり慣れているが、多くの参考書や資料を利用する力はふじゅうぶんである。

 これらが中学生の読みについて一般的に見られることであるが、むろん個人によって大きな差がある。多くの欠陥を持つ者と、少しも持たない者、またはほとんど持たない者があることに注意して、指導を計画する場合、ひとりひとりの実際をよく考えることがたいせつである。

(四)各学年の具体的目標
 以下に掲げた目標は一応各学年に分けてあるが、それがそれぞれの学年だけに限られるものでないということはいうまでもない。

 第一学年

  1. 掲示や広告などを読んで正しく内容をつかむ。
  2. 新聞や雑誌などから話題になるような部分を読みとる。
  3. 日記や伝記・記録などを正しく順を追って読む。
  4. 読書案内や序文や注意書の使用に慣れる。
  5. 国語の辞書や漢字の辞書の使用に慣れる。
  6. 受け取った手紙の正しい扱い方、読み方に慣れる。
  7. 物語や小説の筋をつかむ。
  8. 脚本や台本を興味深く読む。
  9. 韻文のリズムを味わう。
  10. 感想や随筆などを読むことに興味を持つ。
  11. 説明的な文の要点をつかむ。
  12. 効果的な文章表現の技術に注意して読む。
  13. 好きな作品の内容を詳しく読む。
  14. 余暇を楽しい読書にも使うような態度や習慣を養う。
  15. 学級文庫などで喜んで読書するような習慣をつける。
  16. ローマ字文に慣れる。

 第二学年

  1. 規約や掲示文などを批判的に読む力を伸ばす。
  2. 新聞や雑誌などの中の重要な記事を拾って読む習慣をつける。
  3. 日記や伝記・記録などについて、記事の内容を確かめながら読む。
  4. 読書案内や序文や注意書・目次・索引などを利用する。
  5. 各種の辞書や参考書の使いわけができる。
  6. 社交的な手紙を読み、相手の心持をつかむ。
  7. 物語や小説の背景などに注意して読む。
  8. 脚本・台本・シナリオの読みに慣れる。
  9. 韻文の鑑賞に慣れる。
  10. 感想や随筆を読んで内容について考える。
  11. 説明的な文を詳しく読む。
  12. 注釈を利用したりしてやさしい古典の物語を読む。
  13. 文章の構成や修辞に注意して読む。
  14. 文学作品の内容を深く味わって読む。
  15. 楽しみのための読書の能力を伸ばす。
  16. 図書館などで良書を選択して読む。
  17. ローマ字で書かれた書物を自由に利用する。

 第三学年

  1. 広告や規約などの内容を読んで批評する。
  2. 新聞や雑誌などの効果的な活用のしかたを知る。政治・経済・文化などの記事に関心を持つ。
  3. 日記や伝記・記録などについて、その時代や生活を考える。
  4. 読書案内・序文・目次・索引・図表などを自由に活用する。
  5. 各種の辞書や参考書を使いこなす。
  6. 実用的な手紙や届書その他書式を理解し、用件を正しくつかむ。
  7. 物語や小説に作者の考え方がどう生かされているかを考えて読む。
  8. 脚本・台本・シナリオなどの演出について研究する。
  9. 日本の代表的な韻文を鑑賞する。
  10. 感想や随筆を読んで研究する。
  11. 研究や論文などの読みに慣れる。
  12. 内外の古典に関心をもつ。
  13. 文法的な構成、日本語の特性などに注意して読む。
  14. 現代文学のおもなものを選んで鑑賞する。
  15. 生活を豊かにするにふさわしい読書の態度を身につける。
  16. 図書館などでの読書や書物選択の態度・」習慣を身につける。

 右の目標は、むろん一般的なもので、学校の実態によって、入れ替えてもさしつかえない。なお、これを全体として、次のようなことが目標になる。

  1. 漢字の読みに慣れる。
  2. 黙読による読みを速める。
  3. 材料によっては、忠実な精読をする。
  4. 語感を養い、語いを増す。
  5. 絶えず文法に注意する。
  6. 健全な読書の習慣をつける。
  7. 教養のための書物を読もうとする態度を身につける。
  8. やさしい文語文や漢文体の文章を読む。
  9. 広く世界の代表的古典について関心を持つ。

(五)各学年の指導上の注意
 第一学年

  1. まだ唇読をしている生徒を急速に黙読に移らせる。
  2. 文章読解の際、文法的な反省をさせるようにする。
  3. 小学校での読書経験をよく調べた上で指導する。
  4. 読みの速度を自分から進んでいっそう高めるように自己評価させる。
  5. 身近の掲示・広告・手紙などに注意させる。
  6. 新聞・雑誌などを利用して、多種多様な文に慣れさせるようにする。
  7. グループ学習などでなるべく多くの書物を利用するような指導をする。
  8. 個人の趣味を調べて、それに合った読書指導をする。
  9. 読書日記や読後の感想文などを作らせる。
  10. 小学校のときより進んだ各種の辞書や参考書を使うような場面を与える。
  11. 読んでいる間に見いだした新しいことばに気をつけさせる。
  12. 読書衛生に注意させる。
  13. 読もうとする意欲に乏しい生徒に注意し、よく適した読み物を与える。
  14. 他教科の読み物についても調べておく。
  15. 絶えずテストをして、読みの速度を向上させる一方、詳しく確実に読むこともゆるがせにしない。

 第二学年

  1. 新聞や雑誌などの重要な点を速く読みとる練習をさせる。
  2. 作品の具体的理解に必要な作者研究などもする。
  3. 小説の世界に触れさせるため、内外の各種の小説を中心とした学習をすること。この際、人生観について多少とも触れさせるように導く。
  4. 読書カードや読後の感想文を作らせる。
  5. 詩歌・脚本などにとき特殊な能力のある生徒を伸ばすような助言をする。
  6. 巧みな言いまわしやすぐれた語いの使用に気づかせるようにする。
  7. 好きな作品について発表会などをする。
  8. 読書に興味を失っていく生徒もあるから、スポーツ記事や少年少女雑誌などを利用して、興味ある学習をさせるようにする。
  9. ホームルームなどの時間を利用して読後感を発表するようにさせる。
  10. 図書館に利用については正しい習慣をつけておかなければならない。
  11. 理科・社会科その他の学習における参考図書の利用のしかたについても指導する。
  12. ローマ字で書かれた書物も与えるようにする。

 第三学年

  1. 読むことに関心を持たせるために、新聞・雑誌の記事などを、常に話題にする。
  2. 実用的な各種の文について、すばやく読みとる練習をさせる。
  3. 文学作品の鑑賞や批評は、生徒の力に応じてすべきで、とかく高い程度のものになりやすいから注意する。
  4. 対外公演や校内発表の劇や朗読などに参加させることによって、深く読む機会を多くする。
  5. 新聞の社説・論文などを学習の材料にする。
  6. 古典については、特に生徒の実態に即して選んだり、与えたりする。l
  7. 詩や物語・脚本などの朗読によって、文章の鑑賞力を深める。
  8. 映画や演劇などを、脚本・シナリオと結びつけて鑑賞させる。
  9. 必要な図書の貸し借りの方法を指導して、広い読書を助けてやる。
  10. 国語の表記を理解させるために、学校新聞や一般の新聞などを利用する。

 なお一般的に読むことの指導には次のような注意が必要である。

 1 個人個人に注意する。
  (1)各人に評価のための表や、目録・カードなどを持たせて、絶えず進歩を測定することがよい。
  (2)図書館を充実して、個人差に応ずる資料を多く準備すること。
  (3)父兄や、他教科の教師などと連絡して、読書の傾向を常によく注意している。

 2 読むことの学習の準備を重んずる。
  (1)資料を整備して、おのずから読みたくなるようにすることが望ましい。
  (2)日常の話合いを常に読書に関連づけて刺激する。
  (3)映画・劇・ラジオなどと文学作品とを関連させる。
  (4)読む上の抵抗(難語句、特殊なことばなど)を取り除いてやる。

 3読書環境の設定や読書衛生に注意する。
  (1)図書館だけでなく、教室の机の位置や採光に注意すること。
  (2)学校図書館の運営に参加させるほか、公共図書館や、小学校・高等学校の図書の交換利用をも試みるとよい。
  (3)自由な読書の時間、定期的な読書会などを計画したり、読書クラブを作るように勧める。

 4 特殊性との指導に力を入れる。
  (1)読めないものの原因をよく調べて適切な治療的措置を講ずる。
  (2)読みの力がじゅうぶんでない生徒には、基礎的な技術をまずじゅうぶんに身につけるような指導がたいせつだからといって、機械的な練習をさせて、読書への興味を減らしてはならない。

 5 黙読に力を入れる。
  中学校ではいろいろな読み方を学ぶのであるが、実生活で必要なのは黙読であるから、音読よりも黙読に力を入れなければならない。

まえがき
第一章 国語科の目標
第二章 中学校の国語科の計画
 まえがき
 一 聞くこと
 二 話すこと
 三 読むこと
 四 書くこと
 五 中学校生徒の主要な言語経験の一覧表
第三章 中学校の国語科の単元の例
 まえがき
 一 各学年の単元展開の例
 二 各学年の単元の選び方および展開のしかたへの注意
第四章 省略
第五章 省略
第六章 国語科における文法の学習指導
第七章 国語科における漢文の学習指導
第八章 中学校の国語科における習字の学習指導
第九章 中学校の国語科におけるローマ字の学習指導
第十章 中学校・高等学校の国語科の評価
 一 国語科の評価とは何か
 二 国語科の評価はいつ行うか。何について、だれが行うか
 三 国語科で用いられる評価の技術
 四 評価の具体的な着眼点はどこか
 五 評価表の例
第十一章 中学校・高等学校の国語科において使用に適した資料
付録

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