フーンコラム 第14回 後関正明

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道徳の授業を英語で?

 喫茶店で,数人の先生と談笑していた時,隣りに座ったS先生(経験10数年・英語科)が突然「困った,困った」と言い出しました。

S先生 ちょっと聞いてくださいよ。
何?なに?
S先生 今度,校内研修で研究授業をする番に当たったんです。
いいじゃない。大いにやりなさいよ。
S先生 それがね。英語ならまだしも道徳なの。道徳ですよ。研究授業で,いったい道徳にどう取り組んだらいいのか…
実は,ひとついい方法がありますよ。
S先生 え,何ですか?それって。
英語で道徳をやるんですよ。何をびっくりしているんですか。英語の先生なのだから道徳を英語で授業したって不思議はないでしょう。または,英語の授業で道徳を教える,と考えてもいいですね。学習指導要領の道徳の項を見ると,道徳教育の目標は,学校の教育活動全体を通じて道徳性を養うことだというようなことが書かれています。だから,本来は各教科の中で道徳性を養い,身に付けさせることが大切なんですね。先生はそのことをもう授業の中で実践していらっしゃる。ただ,毎時間,道徳性を意識して授業をしているわけではないだけの話です。実は私も現職のとき,英語で道徳の研究授業をしたことがあるんです。
S先生 へぇ,そうなんですか。もっと詳しく聞かせてくださいよ。
02版のニュークラウン(3年)に“A Present For You”という課がありました。これはご存知,オー・ヘンリーの“The Gift of the Magi”(『賢者の贈り物』)が原作です。ちょうど研究授業がその課あたりにくると分かったので,その物語を道徳の教材にしようと決め,ついでに英語でやってみようと準備を始めました。準備と言ってもそんなに大げさなものではないのですが…教科書の「題材」と「道徳の内容」との整合性を考えて「授業の目標」と「指導計画」を練ったのです。
S先生 「賢者の贈り物」と「道徳の内容」はどんな部分で一致したのですか。
現行の指導要領を見てみると,「第2−2 主として他の人とのかかわりに関すること。」の項に「(2)温かい人間愛の精神を深め,他の人々に対し感謝と思いやりの心をもつ。」や「(3)友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち,互いに励ましあい,高め合う。」などが出ています。私はこれらが題材の目指すところと一致していると思い,取り上げたのです。
S先生 私も良く分かります。で,実際にはどのような授業をされたのですか。
細かいことはよく覚えていないのですが,英語よりも道徳が主の授業なのでいつもより日本語が多くなったのを覚えています。確かに人間の心の起伏や微妙な感情の表れなどは英語で説明してもなかなか理解できません。3年生といえども無理です。こちらも無理(?)ですよ。難しくて。(両方で笑い)
S先生 それでグループ活動などはさせましたか。
そうですね。15分くらいだったかな。最後のまとめの前に。
S先生 先生のお話を聞いていると何となくできそうな気がしますが,でも,心配です。
もしやってみようと決断したら,まず題材,指導の目標,指導計画(授業の流れ),言語材料,教材教具,評価規準,評価方法などを少しずつ考えていくといいでしょう。いっぺんにはできませんから,時間をかけて。
S先生 今のニュークラウン(3年)で道徳の授業に適する題材と言ったらどんなところでしょう。
そうですね。これからの進度にもよりますが,Lesson 8の“Without Barriers”が今日的な話題で適切ではないかと思います。また,Lesson 7の“A Vulture and a Child”も道徳の指導要領,第2−3の「(2)の生命の尊さ…自他の生命を尊重する。」や「(3)人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さがあることを信じて,人間として生きることに喜びを見出すように努める。」という項目に合致しますね。その他,ニュークラウンにはいろいろと題材が豊富です。一度,そういう目的でニュークラウンを通読してみたらどうでしょう。新しい発見があるかもしれません。それに3年生が対象なのだから,道徳性については抽象的な話になっても分かってもらえるのではないかと思いますよ。
S先生 先生のヒントのおかげで,がぜん,やる気が湧いてきました。今度の道徳は英語を生かして頑張ります。授業案ができたらお送りします。いろいろご指導ください。
わかりました。肩の力を抜いて頑張ってください。さあ,前途を祝してみんなで乾杯!
他の先生方 ???(一呼吸遅れてかんぱーい!)

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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