フーンコラム 第35回 後関正明

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第35回 英語力と語彙力

 先日ある研究会で「語彙力」についての話題があがりました。研究会のテーマ自体は語彙力ではなかったので、特に突っ込んだ話にはなりませんでしたが、英語力を考える上で語彙力は重要なテーマです。今回のコラムでは、語彙力について少し考えてみたいと思います。

英語力の基礎は何といっても語彙力

 私はやはり、英語力の基礎は語彙力だと思います。教室でコミュニケーション活動をするにも、生徒がある程度の語句を知らないと活動が成立しません。相手の質問の趣旨がよく分かっていて、自分はこう答えたい、またはこういう意見を述べたいと思ったとしても、それを表す単語や連語が思い浮かばなければ表現できません。生徒はそこでつまずき、やる気を失ってしまうかもしれません。私自身も、留学生を引率してアメリカへ行ったときに、現地の人たちと雑談したり、何かのテーマについて話したりして、「もう少し語彙が豊富だったらなぁ」と思い、反省しました。

 実際、コミュニケーションを大切にするのだったら、語彙力は大きな要素になります。個人の持つ語彙力というのは、語句をたくさん知っているということだけではなく、その人が興味や関心を持つ領域の広さをも表していると考えられます。ある意味では、これは個人の知性の豊かさと関連があると言えるかもしれません。このことは、日本語の場合に置き換えても納得できます。日本語でも、語彙が豊富な人とそうでない人がいることは、日常よく感じられるところです。

どうしたら語彙力を高めることができるか

 中学校で使用する教科書の単語はどれも基本的なものばかりなので、生徒にはできるだけすべて覚えさせたほうがよいでしょう。先生方はフラッシュカード、単語カード、あるいはパワーポイントなどを駆使して覚えさせようとしているし、また単語帳を持たせたり、小テストをしたり、ゲームを取り入れたりして、あの手この手で悪戦苦闘していますね。でも思うような効果が上がらないこともあります。

 私がとった方法のひとつは、教科書のコンテクストの中で単語が自然に覚えられるようなプリントを自作し、授業時間内にやらせることです。このワークシートをすることによって、英語の運用能力、つまりはコミュニケーション能力を高めていこうとするものです。もちろんその過程では、基本的な語句を何が何でも覚えなければならないのですが、それは家の土台のようなものだから絶対に必要なのだと納得させて学習させます。

 それでは、1年生用のプリントの例を挙げてみましょう。

NEW CROWN BOOK 1 LESSON 3 pp. 26 〜 31

問題 A 次の文の(   )内に、右にある日本語に当たる英語を書き入れ、文の意味を考えてみよう。

  1. I (    ) a ball in my hand.   <持っています>
  2. I (    ) football (    ) (    ).   <好きです><とても>
  3. You’re (    ) (    ).   <とても上手>
  4. Do you ( ) football (    ) (    ) ?   <練習します><毎日>
     ――No, I (    ) (    ).   <しません>
  5. Do you (    ) (    ) (    ) ?   <休みたい>
     ――(    ), I do.   <はい>
  6. What do you have (    ) (    ) (    ) ?   <手に>
     ――I have a (    ) (    ).   <テニスボール>
  7. It’s (    ) and easy.   <おもしろい>

問題 B 次に、日本語で全文の意味を言ってみよう。

問題 C 英文を暗記してみよう。

 これはほんの一例ですが、1課終わるごとにこのような形で教科書の文すべてに時間内で取り組ませると、生徒はかなり覚えます。特に問題Cまでできれば、語彙も文もほぼ完全に覚えたことになります。このように文の中で文脈と共に覚えた単語は忘れないものです。また、このような問題を先生方ご自身が作り、テストの結果を分析することによって、生徒にとっては学び方、先生方にとっては教え方についてのそれぞれの問題点を見出すこともでき、双方にとって次へのステップになるでしょう。

 2、3年生の教科書でも同様に作問することができます。これを繰り返すことによって習慣化できれば、「新出単語を10回書いてきなさい」とか「暗記してきなさい」というような漫然とした宿題を課すよりも効果的だと思います。私がこの実践を行ったのはもうずいぶん以前のことになりますが、こんなささやかな工夫でも、当時の生徒たちは単語や連語をよく覚えました。現在では、学校や生徒の実態に応じ、語彙力を高める手だてにさらなる工夫をする必要がありますね。

 終わりに、笑い話をひとつ。おもしろさが生徒に伝わるでしょうか。

 “I’d like some shoe cream, please.”
 “To eat?” asked the Japanese store clerk.
 “No, to polish my shoes with.”

「さて、ではシュークリームは英語では何といったっけ?」と問いかけると、またまた生徒の語彙が増えていきます。――ではまた次回、お後がよろしいようで・・・。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラムバックナンバー (第1回〜34回)

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