フーンコラム 第39回 後関正明

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第39回 「題材からのメッセージ」をどう伝えるか

 昨年秋,S区のO先生から次のようなコメントを頂きました。

 今,3年生の必修と選択を担当しています。授業は一応順調に進んでいます。言語材料に関しては基本表現を踏まえ,言語の働きや文型など,文法的な指導も生徒にはかなり浸透していると思っています。選択では受験を控えていますから過去問を中心に指導しています。ひとつ気がかりなのは言語材料の指導と受験指導とに時間をとられ,題材のテーマについてどの程度,またどのように扱ったらよいかよくわかりません。私はNEW CROWNの「題材からのメッセージ」は生徒にとって大切な視点のひとつだと考えています。なかでも世界観を広げる課や日本文化を発信する課など本当は生徒に熱っぽく語りかけ,ともに考えていきたいといつも思っているのですが時間が足りなくて,たいていは不十分な形で終わってしまいます。それでイライラすることもあります。時間が足りないというのはどうしようもないことのようですが…。

 こんなコメントです。特に質問という形ではないのですが,ほかに何人かの先生から研究会の折に同じようなことを伺っているのでこのことについて少し述べてみたいと思います。

 生徒にとって本当におもしろく,ためになる授業というのは,教える教師自身が言語材料や,特に題材に興味を持ち,「おもしろい」「ためになる」と思うことが必要です。言語材料にしても,外国語の言語としての仕組みを学ぶことがおもしろいとか,楽しいと思うことが大切なのですね。これが教科書を使って授業を始める際の大前提になるわけです。O先生はこのNEW CROWNへの熱の入れ方が半端じゃないと思うのですが,それだからこそ,教師の思いが生徒に伝わり生徒が授業に興味を持つのです。興味を持つと生徒は意欲的に取り組むので実力が蓄積されていくのだと思います。そこで,題材を掘り下げる時間が不足するということですが,いろいろ手立てを講じれば,ある程度は解決できると思います。

 例えば,その課に関係する副教材――映像作品,写真,絵,新聞,雑誌,本,パンフレット,地図などなど、題材と関連のあるもの――を集めて提示します。実際に目で見ると時間をかけて説明するよりも理解が早いのは当たり前ですが,より深まることも事実です。したがって,日ごろから見聞するものの中でいつも,「これは使える」「これを次の課で生徒に見せよう」,などと思いながら資料探しを普段からしておくことも楽しいものです。

 3年の教科書で具体的に言えば,2,3,5,7課にはそれぞれ地図が必要です。社会科の先生から掛け地図を借りましょう。地図があれば背景的な知識が伴い,理解が早くなります。そして深まります。また,忙しい先生方のために三省堂が作成した「平成18年度版・NEW CROWN題材資料集」(B4判・52ページ)を活用するのもよい方法です。少ない時間の中で授業の効率をあげるために,是非利用してもらいたいと思います。資料集はコピーして配布し,授業時間内で読ませるとか,内容によっては宿題にして感想文を書かせ,次の時間のレビューでプレゼンテーションをさせてもよいでしょう。いずれにしてもなるべく授業時間内でひとりでも多くの生徒が理解できるように工夫することが大切です。

 7課ではスーダンについて調べさせるのですが,教師も加わり,教師の視点から調べて説明すると,生徒も授業の中で教師との一体感を味わうことができて学習意欲が増すと思います。スーダンでは今も紛争が続いているようですが,戦争や特に貧困と飢餓などの問題を,日本に住んでいる私たちに引きつけて考えるということを15歳の少年,少女たちにさせたいものです。

 時間の制約があって必修の時間では扱えないときは,選択や総合的な学習の時間などを活用することもできます。その際は学年の先生方との連携が必要です。具体的には例えば,5課では,世界地図を掲げて生徒たちに行きたい場所を選ばせ,そこに何があるか,なぜそこに行きたいのか,などの理由を挙げ,ある程度まとまった英語を発表をさせたり,学年・学級新聞などに紙上発表するのもよいでしょう。このような手立てをとって授業を進めると,生徒の英語を学ぶ視点がはっきりし,題材に対する関心が深まり,自国文化や異文化理解を通じて少しでも生徒自身の世界観が広がれば英語教育を通して人間教育に大きな影響を与えることと思います。

 NEW CROWNは,少し重いと感じられる題材もあるとのご指摘を受けることもありますが,先生方の熱心な取り組みで生徒たちは必ず理解します。彼らの研ぎ澄まされた感性は鋭いものがあるのです。それを信じてこれからの指導に大いに力を注いでください。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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