フーンコラム 第46回 後関正明

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第46回 授業のスパイスに詩はいかがですか?

 今回は夏休み中ということもあって指導法に関する質問はなかったのですが,何人かの先生方と暑気払いをしていたときに「詩」についての話題になりました…。

A先生:  たまには授業で詩でも読んでみたいのですが,なかなか時間がとれなくて…。
B先生:  そう,私も詩は好きだから,何とかして生徒に詩の美しさを味わわせたいと思っているのですが,何しろ日々の喧騒の中ではなかなかその気分になれなくて…。
C先生:  詩や歌もいいけれど,教える自分自身が好きになれないと,たとえ教科書にあっても素通りしてしまうよね。それに,確かに時間もないし…。

 このように,いろいろな意見が出ましたが,結論的には「時間がない」ので,そこまで手が回らないとのことでした。そこで,私は一席ぶたせていただきました。

私 :  週3時間の授業の中で,さらに行事で授業がつぶれたりして,先生方に余裕がないのはよく分かるけれど,そうやってもんもんと授業を続けていても,やっぱり余裕はうまれません。ここで思い切って,たまには方向転換してみたらいかがですか。
先生方:  ???
私 :  皆さんは「不定詞の用法などを口をすっぱくして教えても,生徒がなかなか覚えてくれない。どうしよう」などとストレスがたまるほど考え込んではいませんか? たまには「今日は不定詞の勉強や動名詞の勉強はやめよう!」「文法だのなんだのは置いといて,今日はこれをやってみよう!」と,例えば,NEW CROWN 2の付録(p.104)にある「詩」をポンと生徒の前に出してみてはいかがでしょうか。

What are heavy?
          by Christina Rossetti

What are heavy?
Sea-sand and sorrow.
What are brief?
To-day and tomorrow.
What are frail?
Spring blossoms and youth.
What are deep?
The ocean and truth.

 このほかにもMother Gooseなどを出してみるのもいいでしょう。英語の詩は,日本語の詩とリズムやライムが異なっているので,何回も声に出して暗誦できるくらいに指導すれば,英語に特有の語感や音感の基本が身につくと思われます。

A先生:  しかし,生徒はそれだけで満足するでしょうか?
私 :  多分満足しないと思います。
B先生:  とすると,あとは?
私 :  私は,このあと生徒たちに言いました。「さて,今度は君たちが自分で英語の詩をつくるんだ」。生徒は,「ええっ,詩なんて書けねえよ」「難しいよ」「無理だよ」などと言っていましたが,「イラストをつけてもいいよ」などと言いながら,用紙を配りました。「少し無理かな」とも思いましたが,わずか20分くらいで書いた生徒もいました。p.105にあるような手引きを参考にしてもいいですが,私は自由に書かせました。生徒の作品を見てみると,実にすばらしい詩を創作しているのですね。われわれ教師が思いもつかぬ感性を生徒は持っているのです。私が墨田区の両国中で教えたときの2年生の作品がいくつか手元に残っていましたので,それをご覧に入れましょう。(いずれも原文のままです。)

Spring
          by Y.C.

“Good bye, Good bye.”
Someone said in a sad voice.
After a week,
“Hello, Hello.”
Someone says with warm wind.
Oh, spring has come.


Sky
          by M.M.

How blue the sky is!
It’s fine today and there is not a cloud in the sky.
There is not a cloud in the sky.
It’s just like in the world of vision.


Music And I
          by H.Y.

Music! It is my friend.
Music! It is my reason for living.
Music! It is necessary for me.
Music! It is a close friend in my heart.

 今はもう30代半ばになっている,当時の生徒たちの作品ですが,どうでしょう。なかなか読ませる詩でしょう? まだまだたくさんありますが,ふだん授業であまり目立たない子が,はっと思わせるような詩を創作したりするのです。もちろん,それがきっかけになって英語を好きになった生徒もいましたし,‘Music And I’を書いた生徒は,音大卒業後にイタリアに留学し,今は歌姫として活躍中です。

先生方:  うーん,なかなかやるもんですね。でもうちの生徒はどうですかね。
私 :  いや,やってみれば,はっとするような詩を書く生徒は必ずいるものです。ただ,彼らはつくるきっかけも機会もないだけの話なんです。先生方の「やってみよう」という意気込みさえあればできます。生徒たちの新鮮で鋭敏な感性を引き出し,それに気づかせてあげるのは,われわれ教師の大きな役目ではないでしょうか。不定詞や動名詞を教えることも,もちろん大切です。しかし,時には定番の「復習―導入―展開―整理」という型を破って生徒たちの琴線に触れる授業を目指してみることも必要でしょう。極端なことを言えば,不定詞や動名詞は塾でも教えてくれるかもしれない。しかし,「詩」を教えることは,日々生徒と生活をともにしている学校の先生だからこそできるのです。
先生方:  改めて言われてみると,その通りですね。とにかくやってみたいと思います。
私 :  きっといい結果が出ますよ。期待しています。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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