フーンコラム 第49回 後関正明

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第49回 スピーキング指導の効果的な方法について

 今月は都内S区Y中学校のN先生からお電話でご質問をいただきました。N先生は採用10年目だそうで,東京都のいわゆる「10年目研修」を受けているとおっしゃっていました。質問の内容はスピーキングの指導についてでした。現在は1年生全員(3クラス)と2年生2クラスを教えていますが,スピーキングの指導で行きづまっているとのことでした。

 N先生いわく「教科書(NEW CROWN)には本課と本課の間にスピーキングの活動をメインとしたページ,DO IT ― TALK(以下,TALK)があります。選択的な活動としてTRYがあとに続き,チャレンジできるような構成になっています。TMの指導例を参考に授業を進めているのですが,私の扱い方が悪いのか,どうもこのTALKは生徒たちの関心が薄く,いまいち盛り上がらないのです。時間も足りなくて急ぎ過ぎているからかもしれませんが,私としても納得のいく授業にならないのです。どうすればいいでしょうか」ということでした。

 そこであらまし次のようにお答えしました。

1年生のスピーキング指導

 TALKの指導では,対話を単にペアを組んで読ませたり,何組かに対話をさせて皆に聞かせたりするだけでは生徒は退屈します。例えば,1年生のTALKは次のように指導してみてはいかがでしょうか。まず,スピーキング指導の前段で本文の音読指導をします。発音に気をつけ,語のアクセントや文全体のイントネーションにも気を配りながら相手にきちんと文章の中身が伝達できるようにするため,コーラスや列ごとに読ませて対話の雰囲気に慣れさせます。1年生のTALK 2なら,集中して指導すれば10分程度で読めるようになります。次に,全員,起立させ,暗誦活動に入ります。暗誦できたら座らせるのですが,slow learnerにも配慮して,先に座った生徒にも暗誦活動は続けさせます(生徒はできたと思っても案外座らないことがあるので,時間がかかるときは臨機応変に途中でもストップします)。次に,ペアを組ませ(組み方もいろいろ方法を変えて),やはり立たせて練習させます。私の場合は,暗誦は徹底してやらせました。それからペアで発表させます。そのとき,年に1〜2回ですが,すべてのペアの対話を録音しました(録画ならなおいいと思います)。録音するとなるとマイクの前に立つわけですから,初めはとても緊張します。しかし,そのほどよい緊張感から初めは難しいと思っていた暗誦が出来た喜びと達成感で,個々の生徒は満足感に満ちた顔になっていったことを覚えています。また,次の時間にその録音を皆で聞くわけですが,全員が興味を持って聞いていました。ここで欲を言えば,先生だけでなく生徒同士で相互評価をさせてみてもいいでしょう。評価項目は,1.語のアクセント,2.文のイントネーション,3.文の区切り,4.全体的な発音の印象などです。評価をさせることで,生徒は責任を感じ,まじめに聞きます。それらの評価を通じて先生も生徒も次回のTALKのplan-do-checkをするための土台作りができ,一層のレベルアップが期待できます。ただし,さすがにここまでするにはかなりの時間(最低3時間)が必要になるでしょう。すべてのTALKにこれだけの時間はとてもかけられません。ですから,先ほど述べたように,このように大がかりにTALKをやるのは,年に1〜2回ぐらいが適当でしょう。

2年生のスピーキング指導(1)

 さて,2年生の授業です。1年生である程度TALKに慣れ親しんでいれば,2年生ではTALKの内容を生徒同士がアレンジした応用文で対話ができるように指導します。そのとき,先生の方で入れ替え用のcontent wordsを集めたWORD BANKの一覧表を作って配布すると,生徒は気に入った単語を使って喜んで対話します。一覧表は,教科書に出ているWORD BANKをもとにして先生ご自身で種類別に作ることも可能です。例えば2年生のTALK 1ではWORD BANKにbarbecue,beef,porkなど11種類の飲食物が出ています。これに先生のお好み,または生徒の希望でいくつか付け加えると,さらに生徒の興味をひくでしょう。WORD BANKは,他に,職業・スポーツ・食物(肉,魚,野菜,果物等)・動物・植物(花や木)などをあらかじめ種類別に作成しておいても,題材によって使い分けできるのでとても便利です。

2年生のスピーキング指導(2)

 これまでの話は,TALKを使ったスピーキングについての話でしたが,原稿をあらかじめ用意してスピーチの活動をするのも,立派なスピーキング活動です。例えば,NEW CROWN 2年生のDO IT WRITE 1を発展させて,自分の将来なりたい職業について教科書本文に匹敵するくらいの語数(実質100語ぐらい)で自由に作文させます。その際,生徒に自分でイラストを書かせると,さらに興味を増します。また,イラストがあるとスピーチのときに説明がしやすくなるものです。イラストを指しながら一息入れたり,忘れた文章をちょっと見たり,または言い直したりするきっかけが生まれるのです。実際,皆の前で何も見ないで棒立ちになって話すのは難しいですから,そんな工夫が必要でしょう。先生のタイミングのよいアシストも大切です。また,上位の生徒には原稿を見ないで言えるように指導するとよいと思います。教科書から離れて「私の日曜日」という題を与えて日曜日にどう過ごしたかを日記風に書かせてみても,いろいろと面白い原稿にめぐり合えます。これも100語ぐらいで作文させて,1日のハイライトを示すイラストを描かせます。そして,それらを見ながら生徒はスピーチをするわけです。スピーチの録音や録画も可能ですので,時間があり,他教科の先生の協力もお願いできたらぜひ実行してみてください。

 3年生のTALKの指導はまた別の機会にお話しましょう。それではN先生,長々とお話しましたが,また何かありましたらいつでもご連絡ください。

 Nice talking to you, N-sensei!!!

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラムバックナンバー (第1回〜48回)

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