フーンコラム 第52回 後関正明

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第52回 英語科と他教科との連携を考えてみましょう その2

 

 前回,英語科と他教科との連携について考えてみましたが,質問された先生から再質問があり,電話を通じていろいろと話がはずみました。今回はその模様を要約してみました。

T先生:  先月号では私の質問を取りあげていただき,ありがとうございました。今まで気がつかなかった事柄について再認識いたしました。また,同僚の先生方との連携のあり方についてもお話しいただき感謝しております。ところで,先月号では主に2年生の題材についてお話しいただきましたが,3年生についてはどんなところに注目したらいいのでしょうか。また,文法項目など,日本語の文法との関連についても教えていただきたいのですが,よろしいでしょうか。
私:  わかりました。他教科の先生方とは教科内容についての連携だけでなく,生活指導面も含めて学校の教育活動全般にわたっての連携が大切です。まず,このことを基本にしていろいろと考えていくことが必要です。
 さて,NEW CROWN(3年)の題材と文法事項について,他教科との連携についてのご質問ですね。たとえば,先生は具体的にどの課がどの教科と連携できると思っていらっしゃいますか。
T先生:  まず,2課の“Interview with Ms Kileo”です。これは,アフリカ・タンザニアの話題ですね。ですから,社会科の先生にちょっと触れていただければ,と思っています。
私:  そうですね。でも,触れていただくきっかけを上手につかまないと…。相手の先生も自分の授業で精一杯なのです。そこで,私なら,まずアフリカ全土の掛地図を拝借し,その折に,「実は,今度の授業でアフリカを扱うので…」というふうに話をします。すると,くだんの先生も多分こちらの話にのってくれます。これは小生の経験ですが…。その大きな掛地図は生徒たちも初めて見ると,「エッ」と思うのですね。くるくる巻かれた掛地図には「社会科用掛地図」というラベルがはってあるのですが,生徒はそれを目ざとく見つけて,「社会の○○先生から借りたんだ」などと言います。そこで私は「○○先生は気持ちよく貸してくれたのです」などと言いながら,同僚である○○先生との連携をそれとなく強調するわけです。実は,このように先生の間でも和気あいあいとした雰囲気があるということは,授業を進めるのに大切な要素のひとつになるのです。そして,授業では,タンザニアの位置を確かめたり,キリマンジャロ山に触れたりしながら,生徒とともにアフリカ・タンザニアの旅へと出発します。
T先生:  なるほど… 導入時に教える側でそうした雰囲気づくりをすることも必要なのですね。ところで,この課では,文法項目として「現在完了(継続用法)」を習います。「現在完了」という「用語」は日本語の文法にはない項目のひとつなので,日本語文法との対比が難しいところですが…
私:  ここは,無理に対比させなくてもいいのです。「現在完了」とか「不定詞」「動名詞」などは英文法の用語ですから,簡単に対比はできません。意味内容を説明し,日本語に「現在完了」という用語はないにしても,同じ表現方法はあり,ふだん私たちも使っているものだということを例示して説明すればよいでしょう。いきなり「『現在完了形』というのは…」などと始めないことです。文法用語は「最後の最後」に出した方が生徒たちの文法に対する抵抗感が少なくなります。(※「現在完了(継続用法)」の指導に関してはコラム第31回で扱っています。)
T先生:  よくわかりました。では,4課“Sadako and the Thousand Paper Cranes”の扱いはどうでしょう。また社会科との連携でしょうか。
私:  そうですね。一応社会科との関連が深いようですが,ここは思い切って「道徳」の授業とリンクさせてみてはどうでしょう。
T先生:  「道徳」…ですか?
私:  そうです。そんなにびっくりしないでください。先生は担任をお持ちですね。でしたら,4課の題材をそっくり道徳の時間の題材にすることができます。私もかつてオー・ヘンリーの『賢者の贈り物』を扱ったことがあります。道徳の授業ですから,当然,日本語による説明が多くなりましたが,生徒は「英語と道徳がリンクできるんだ」と授業の終わりころに気がついて納得したようでした。
T先生:  なるほど。白血病で亡くなった佐々木禎子さんについて,さらに広く,深く学ぶことは「平和への願い」を常に心に抱く私たち日本人として必要なことですね。
私:  そうですね。道徳の授業で学習した知識は,逆に4課の英語をより深く理解する源にもなると思います。題材に親近感を持ち,題材への興味と関心が喚起されてそれらが持続し,学習意欲の増進につながるのです。教科書ではこのほかに,お隣の韓国,中国やモンゴル,北米,南米,アフリカなども題材になっています。社会科の先生に限らず,他教科の先生でも,外国へ行ったことがある先生がいれば,写真やちょっとした小物のお土産などをお借りして教材として見せると,生徒は「へぇ…,○○先生は中国へ行ったんだ」「いつ行ったんだろう」「先生は中国へ行ったことがありますか」などと,クラスが活発になります。そして,「現在完了(経験)」を教えるのにぴったりの環境が自然にできあがります。教師は,そのあたりの「空気」を読んで,たくみに生徒を授業の核心へと誘導していけますね。
T先生:  本当にそうですね。私も同僚の先生の似顔絵を使ったり,訪れた外国の話を聞いて話したり,パターン・プラクティスで先生の名前をよく利用したりするのですが,生徒は確かにのってきます。ご教示いただいたことをこれからの授業に活かし,また自分でも工夫をしながら授業を進めていきたいと思います。いろいろとありがとうございました。
私:  がんばってください。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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