フーンコラム 第53回 後関正明

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第53回 新1年生の指導について

 

 この4月で7年目を迎える都内H市D中学校のI先生から次のように始まるお手紙をいただきました。

 この春から新1年生を受け持つことになりました。新1年生を教えるのは3回目になります。過去2回は無我夢中で新1年生と共にすごしました。次は,言わば「3度目の正直」です。私としては,過去の授業を反省し,いろいろと考えながら自分なりに改善して授業に取り組みたいと思っています…。

 ご質問の内容は次の3項目に要約できます。

  1. この4月からALTが半年間常勤になる予定です。ALTとのTeam Teachingは,今までのような思いつきの授業やALTまかせの授業ではなく,自分が「音頭」を取って授業を組み立ててみたいのですが,アドバイスをお願いできますでしょうか。
     
  2. 新1年生は,市内全域,主に3つの小学校から100人ほど入学してきます。各小学校で行われている英語活動はまちまちで,活発な学校と,ほとんど実施していない学校があり,英語活動に慣れ親しんでいる生徒とそれほど慣れ親しんでいない生徒が入り混じるのではないかと心配しているのですが,どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。
     
  3. 1年生のNEW CROWNを使うのは初めてなのですが,LESSON 1に入る前のLET’S START 1 〜 5ではどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。

 そこで私は要点のみ次のようにお答えしました。

(1)ALTとの連携について

 新1年生はとにかく英語を使いたがっています。生の英語を聞いてみたい,誰かと英語で話してみたいと願っています。そのような意欲に燃えている新1年生にやる気満々のJTEとALTが協力して授業に取り組めば,英語の授業は充実すること請け合いだと思います。

 ALTとうまく協力体制をとるには,長めのスパンを視野にいれた授業計画が必要になります。まず,ALTと年間の(あるいは学期ごとの)シラバスについての打ち合わせをするとよいでしょう。ALTと念入りに打ち合わせをする時間がとれないという声はよく聞きます。学校の年間カリキュラムに合わせ,各学年の英語科のシラバスが決められるときに,なるべくALTにも会議に参加してもらい,授業構成の分担などについて,できるだけ細かくねるようにしたいものです。学期が始まってしまうと,その都度相談する時間は確かにないものです。

 次に具体的な授業の組み立てについてです。NEW CROWN BOOK 1の年間指導・学習内容一覧の中で4技能の各領域を見ると,DO IT LISTENをはじめ,各LESSONで「聞く」領域が強調されています。ここはJTEよりもALTの出番です。生徒は,目の前にいるALTに英語を読んでもらったり,ALTと簡単な会話をしたりすると,非常に喜びます。また,LET’S STARTの1 〜 5では,ALTとJTEで主導し,生徒に徹底的に英語を発音させてみてください。教科書以外の単語も,カードに絵を描いて提示するとよいでしょう。そんなにたくさん単語を提示して大丈夫だろうか,などと心配する必要もないくらいに生徒たちは苦もなく覚えます。このLET’S START 1 〜 5のアクティビティは「アクティビティ アイデア集」を参考にしていただいても結構です。「クラスみんなが友だちだ」,「2人で協力 ゴールイン」,「カードゲームで単語をマスター」など,全員が楽しめるアクティビティのアイディアがそろっています。
いずれにせよ,入門期(1年生前期前半),充実期(1年生前期後半),実力養成期(1年生後期),反省期(年度末)に合わせて,それぞれ,どのように提携するかをALTと話し合うことが大事です。

(2)英語活動に慣れ親しんでいる生徒とそれほど慣れ親しんでいない生徒が入り混じることについて

 小学校の英語活動に慣れていようといまいと,中学校の英語教育はあくまでもゼロから出発するのが基本です。英語活動をたくさん経験してきた生徒であっても,中学校で習う「ことばの技術・技能の基礎・基本」の習得はこれからですから,あくまでもゼロ発進と考えてよいわけです。中学校の英語教育の目標は,1年次から,順次,「ことばの技術・技能の基礎・基本」を学び,それを身につけさらに思考力や言語観を伸ばし,言語能力の全面的な発達を目指すことです。ですから,はじめは教えるのに「でこぼこ」があってやりづらい面もあるかもしれませんが,先生が目標をしっかりお持ちになり,英語教育への思い,または,信念を貫き通していけば,必ずその意思は生徒たちに通じると思います。習熟度が進んでいる生徒たちも満足するようなアクティビティを臨機応変に創意工夫してみてもいいわけですが,あくまでも「基礎・基本」の大切さを生徒たちに知らせることが不可欠です。ALTとの関係で言えば,ALTにもクラスの成り立ちや実態をきちんと伝え,英語活動に慣れた元気のいい生徒だけを相手にするのではなく,まったくALTに接してこなかった生徒たちにこそ目を向けた指導を心がけ,彼らに劣等感を持たせないようにしてほしいと,打ち合わせのときにはっきりとお願いしておくことが必要です。

(3)NEW CROWNの入門期の指導について

 LET’S STARTの1 〜 5までは徹底してListening,Speaking,Readingに力点をおき,次のような点に注意して指導してみてはいかがでしょうか。

  1. Greetingの練習を何度もして,英語の雰囲気をつくります。これをきちんとやっておかないと,始まりや終わりの挨拶ができなくなり,けじめのない授業になってしまいます。
     
  2. はじめからClassroom Englishを使うべきですが,英語活動に慣れていない生徒たちに配慮して,最初は日本語も併用し,少し安心感を与えたほうがいいと思います。
     
  3. SpeakingやReadingの指導では,意識して生徒に大きな声を出させます。はじめから小さい声を認めてしまうと,それが習慣になり,あとでいくら「大きな声で!」と言ってもゼッタイ大きな声には戻りません。

なお,1年生の指導に限りませんが,実際に指導をしていく際には,「アクティビティ アイデア集」やTMの「Team-Teaching Manual」,「言語活動ワークシート集」,「音声CD」,「指導用CD-ROM」などを存分に活用してください。豊富なアイディアがつまっており,新たな授業展開へのヒントになるはずです。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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