フーンコラム 第55回 後関正明

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第55回 「新学習指導要領で英語の授業はどう変わりますか」

 先日,S区のO先生から次のようなメールをいただきました。

拝啓 後関先生お久しぶりです。昨年5月のフーンコラムで取り上げていただいたS区のOです。1年近くご無沙汰しまして申し訳ありません。相変わらず同じ学校で,元気で頑張っております。

 さて,上述のコラムで取り上げていただいたトピックは「授業中のリーディングの大切さ」についてでした。その後,リーディングについて,他の先生からもご質問があり,リーディングについてのコラムが計3回続きました。いずれも大切なコメントであり,私もそれを参考にして授業を続けてまいりました。奇しくも,先ごろ文部科学省から出された新学習指導要領の外国語の「第1 目標」を見ますと,これまでは,「聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養う」としか出ていませんでしたが,今回は,「聞くこと」「話すこと」に「読むこと」「書くこと」が加わり,これら4技能のコミュニケーション能力の基礎を総合的に養うことが明記されています。やはり,今まで「聞くこと」「話すこと」に重点が置かれ,「読むこと」「書くこと」が少々おろそかにされてきたことへの反省かと思います。もちろん,これまでも「第2 各言語の目標及び内容等」の項では,4技能についての目標や内容が示されてはいましたが,最初の「第1 目標」の中に「読むこと」「書くこと」という文言がなかったことは問題だったと思います。昨年の3回にわたるフーンコラムの「リーディングの大切さ」は今回の文部科学省の告示の先取りをしたようなもので,私としても「わが意を得たり」という感じです。

 そこでお尋ねしたいのですが,新学習指導要領で,リーディングについて特に目立った改正点などがありましたら解説していただきたいのですが,いかがでしょうか。よろしくお願い致します。

敬具

 私はこのご質問に,次のようにお答えいたしました。

拝復 O先生,お元気で何よりです。学習指導要領について,今回の告示も含め,いろいろと勉強されているのに感心しました。

 思えば,昨年,先生のリーディングに関するご質問からこのコラムがずいぶん賑いました。それだけリーディングに関心をお持ちの先生方が多いのだと思います。おっしゃるとおり,今回の告示で「第1 目標」に「読むこと」と「書くこと」が明記されました。このことにより,リーディングやライティングに関しての指導が,今まで以上に力点をおいて進められることと思います。「第2 各言語の目標及び内容等 2 内容 (1)言語活動」の「ウ 読むこと」の項目では,「物語のあらすじや説明文の大切な部分などを正確に読み取ること」と出ています。また,新しく「話の内容や書き手の意見などに対して感想を述べたり賛否やその理由を示したりなどすることができるよう,書かれた内容や考え方などをとらえること」という一項が加わりました。このような形で「内容や考え方などをとらえること」は実は容易なことではないと私は思います。通り一遍の生半可な読みではとうてい目標に到達できません。かなり読みを深めなければなりません。思考を深め,賛否などの判断力を養い,感想を述べるなど,表現することを見とおした読みが求められています。これらの目標はかなり高いレベルのものだと言えるでしょう。したがって,これからは,先生方個々の考えのもとに,「読むこと」の指導を一層工夫して行うとともに,評価規準なども,学校や生徒の実態に応じて,新たに作成する必要があると思います。評価規準の細目についてはどんな細目があるか,O先生ご自身の学校や生徒の実態に即したお考えを聞かせていただければ幸いです。

 ご参考までに,「書くこと」に関して追記された点をあげてみますと,まず,「語と語のつながり」「文と文のつながり」などに注意して書くことについて指導することが明記されています。また,(物語や説明文の)「感想,賛否やその理由」,「身近な場面における出来事や体験したことなどについて,自分の考えや気持ちなど」について書くことの指導が明記されています。このようなことについて,文構造やいくつかの文のまとまりを意識させて書かせることは,これもまた,かなりレベルの高い目標といえるでしょう。

 今回の新学習指導要領では,「聞くこと」,「話すこと」だけではなく,「読むこと」,「書くこと」にも比重をかけて,4技能を総合的にバランスよく指導するよう求められています。もうひとつ大きなこととして,英語の授業時間が,週4時間に増えることとなります。それなりに教科書の内容も変わるでしょう。新学習指導要領に示された高い目標が達成されるよう,先生方のさらなる創意工夫が待たれるところだと思います。頑張ってください。

敬具

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

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