フーンコラム 第64回 後関正明

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第64回 「PISA型読解力を育てる授業とは?」

 

 前回のフーンコラム(第63回 「PISA型読解力」と英語の授業)では,「PISA型読解力」についての概略を述べました。今回は,英語の授業の中で,実際に「PISA型読解力」をどのように育てていくのかについて,具体的な教材を例にとって考えてみたいと思います。

 テキストはNEW CROWN 3 にあるReadingのためのセクション,LET’S READ 2 “Human Rights for All”Section 1(p.78) を引用し,「読む」ことを中心とした言語活動に落とし込んでみましょう。

 まず,本文は次のとおりです。

Like most Japanese junior high school students, you come to school every day and go home after school. These are activities that are natural for you. But many children in other countries cannot go to school. They cannot spend time at their homes.

These children may live in countries at war, and they suffer. They are treated unfairly, and they suffer. Because of these sufferings, they have to leave their schools and homes behind. These children are refugees.

リード文には,「世界には難民と呼ばれる人たちがたくさんいます。このエッセイを読んで人権の問題について考えてみましょう」と,日本語による問いかけがあります。そして,PRE-READINGとして,「@難民はなぜ生まれるのでしょうか。A人権とはどういうことでしょうか。」という問いがあります。これらの問いは,本文を読む目的を与え,「人権問題」について考えるきっかけになると思います。いきなり本文を読ませるのではなく,「難民て知ってる? 人権て何だろう?」と,説明を補いながら,本文に入ります。3年生も最後となると,文法的な知識はあると思いますので,各1文の意味については理解できると思います。このページには,コソボから逃れてきた人々の難民キャンプの写真が載っているので,その写真についての説明も交えながらピクチャーカードを使って,次のように授業を進めます。

Look at this picture. Where do the people live? Do they live in tents? − Yes. They must live in tents. These tents are in camps, but these tents are not their real homes. They cannot live in their own house. They cannot spend time at their homes. All the children cannot go to school.

 このような英語による解説のあと,本文の日本語訳を与えます。本文の内容理解を確実にするためです。そして,次の手順で授業を進めていきます。

  1. CDを聞く
  2. 教師の範読を聞く
  3. 教師のあとに続いてリピートする
  4. 教師のあとに続いて今度はテキストを見ないでリピートする
  5. 内容が理解できたかどうか確かめるために次のQ&Aを行う
    1. Like most Japanese students, do you come to school every day? Do you go home after school everyday?
    2. Is it normal for you to go to school every day? Is it normal for you to go home after school?
    3. Can most children in other countries go to school?
    4. Can most children in the world spend time at their homes?
    5. Are the children in other countries at war treated fairly?
    6. Why do many children have to leave their schools and homes behind?

 これらのQ&Aで,クラスの半数ぐらいが分かれば,まず第一段階は超えたと判断してよいと思います。あとの半数には,日本語を交えながらQ&Aをすることで,内容を理解させます。内容を理解しようとすれば,生徒はよく考えなくてはなりません。このような活動を,2年生の後半あたりから,習慣的に続けていれば,生徒は「考える」力が養成されると思います。

 しかし,ここで終わらずに次の段階へ進むのが,今回のコラムのミソです。「表現させる」段階です。この課で学んだことをペアやグループになって話し合い,協力して意見や考えを発表したり,書いたりすることで,より一層理解力を増すものと思われます。その際,世界の各地でいまだに絶えない紛争や,それに伴う難民問題の新聞記事などをコピーして,投げ込み教材として与えると,生徒は時事問題として本文を読むことができますし,また,内容理解をさらに深めることができると思います。

 このように「PISA型読解力」の育成を取り入れた授業は,内容を理解させ,よく考えさせ,そして理解と思考に基づいた表現活動にまで到達するという授業の流れが重要です。しかし,それにはかなりの時間がかかると思います。いきなり,教科書のすべての課を,上記のように展開することはとうてい不可能です。NEW CROWNでいえば,各LESSONの最後にあるTHINK ABOUT ITを参考にしながら,少しずつ,習慣的に教科書本文の内容について考える時間をもちたいものです。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラムバックナンバー (第1回〜63回)

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