フーンコラム83回(2011年9月号) 後関正明

「読むこと」に力点をおいた指導のあり方

前回のコラムに関して都内B中学校S先生(教師歴6年)から次のようなお手紙をいただきました。

前略 

第82回のフーンコラムを大変興味深く読ませていただきました。ワークシートの作り方と使い方についても,今まで勝手気ままに作り生徒にやらせていたのを反省し,教科書の言語材料と題材にどう関連させるかを考えながら作るようになりました。

ところで前回のコラム「授業で扱うワークシート」の「4技能については…平均的に扱う必要はなく一単位時間内に…」(下記下線部分)について,詳しく解説していただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

草々

《前回のフーンコラムから一部抜粋》

(2)ワークシートは,一単位時間内で教科書と密接に連動させることも必要です。通常,授業ではいわゆる4技能を平均的に扱うわけですが,――4技能については言語材料または題材によって必ずしも平均的に扱う必要はなく,一単位時間内に,例えば「聞くこと」「話すこと」を中心に徹底してその技能を身につける場合もあります。

私の返信(前置き省略)

まず,新学習指導要領では従来の“「聞くこと」「話すこと」を中心とした”実践的コミュニケーション能力の育成”を改め,「読むこと」「書くこと」活動を含めた,いわゆる“4技能全体のコミュニケーション能力の育成”が強く打ち出されています。これからは「読むこと」「書くこと」にも「聞くこと」「話すこと」と同等の力点をおき,4技能の総合的な育成を目指すことになります。

このことを前提として考えますと,実際の授業では4技能のバランスの取れた授業内容が望ましいといえます。しかし,わずか50分の授業の中で4技能を総合的に,または平均的に育成するといってもそう簡単にはできません。前時の復習などで時間を割けば,すぐ10分ぐらいは経ってしまいますので,残りの40分では4技能の総合的な育成はとうてい無理です。したがって,あるレッスンを6〜8時間に割り振り,ある時間は1つか2つの技能に徹するという方法が考えられます。つまりそのレッスンが終わったところで,4技能のコミュニケーション能力が総合的に扱われていたとなればそれでOKということになります。ですから,「1単位時間の中で必ずしも4技能を平均的に扱う必要はない」と申し上げたわけです。

次に,いかにして4技能に「メリハリ」をつけて授業をすればよいのかということになりますが,その判断の基準となるものとして「言語材料や題材」,「文の種類(叙述文・対話文など)」などが考えられます。

では,NEW CROWN BOOK2 LESSON8“Landmines and Children”(平成18年度版)を例にとってご説明しましょう。この課はセクションが3つに分かれ,セクション1は叙述文で,“landmines” についての知識をしっかり身につけるようになっています。いわばこの課の題材の基本事項を学習する大切な部分です。したがって,ここは時間をかけてじっくり読むことが必要です。

例えば,イントロダクションでのteacher talk から始まり,教師のモデルリーディング→教師かCDの音声に続けてのリピーティング→写真や絵を用いての内容説明(これはできるだけ英語で行うことが望ましいのですが,時には日本語での和訳を交えてもよいと思います)→バズリーディング→ペアリーディング→内容理解のための「黙読」などを行い,「読むこと」に集中します。もちろんこれらすべてを1時間でこなすのは無理ですから,もう1時間「読むこと」にあてますが,読みばかりでは生徒が飽きてくる場合がありますから,教師がいわゆる新聞記事などの「投げ込み教材」などを使って目先を変えるのも飽きさせないための一つの方法でしょう。またその間,CHECK IT(基本文の定着のための反復練習)などをおさえた上で、この課の文法項目の「受け身形」にも簡単に触れます。この「簡単に」がミソなのです。なぜならこのレッスンが終了したとき,巻末の文法のまとめを参照しながら「受け身形」について,ここぞとばかり学習させるので,はじめは「簡単に」でいいのです。

さて,次のセクション2と3は対話文です。ここは当然「話すこと」が主になりますが,ペアで「話すこと」を始める前にやはり内容が理解されていないと話もはずみません。したがって,きちんと読めるように指導し,内容をつかませてから「話すこと」に徹すればいいでしょう。ペアで話させる場合も,その場で立たせるとか,前に出て対話をさせるとか,いろいろな方法がありますが,最終的には暗唱して対話ができるように指導したいですね。このレッスンの最後の活動として,USE ITの中のTHINK ABOUT IT に,「このレッスンであなたが地雷について学んだことを書いてみよう」という課題があります。扱っているテーマが深い内容なので,ここは教師の支援が必要でしょう。時間内におさまらなければ宿題にします。記入用紙を配布・回収し,教師のコメントつきで(忙しいさなかで恐縮ですが),返却できればこのレッスンの授業は満点ですね。そして,このセクションの授業内容はあくまでも「読むこと」がMain Activity ですが,地雷について「書くこと」でさらに教科書を深く読むことを要求することになりますので,「読むこと」の意義が一層高まるわけですね。

長くなりましたが参考になれば幸いです。頑張ってください。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラムバックナンバー (第1回〜82回)

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