フーンコラム90回(2012年11月号) 後関正明

統合的な活動「Mini-project」の効果的な活用法

 今回は,NEW CROWN BOOK 1(三省堂)のUSEにあるMini-projectについてのご質問にお答えしたいと思います。

 都内P市の中学校で1年生を教えるA先生(教師歴6年目)からのご質問です。
私は今年初めてNEW CROWNを使うことになりました。USEのMini-projectの扱いについてお尋ねします。このコーナーは本文(GET)とはその目標も授業のプロセスも違うわけですが,今考えるとLESSON 3とLESSON 6にあるMini-projectの授業は反省点が多いように感じています。そこでLESSON 8にあるMini-projectを学ぶ生徒たちも教える私も満足できるような授業にするためにはどんな手立てが必要かをご教示ください。


NEW CROWN BOOK 1 LESSON 8(三省堂) /※クリックでPDFファイルを表示します

 このMini-projectの目的は,「聞く」,「話す」,「読む」,「書く」の4技能を統合して言語活動を行うことです。これをまず念頭に置いて授業を進めてほしいと思います。次に,題材ですが,LESSON 8はSchool Life in the USA,そしてこの課のUSEのMini-projectでは,中国とオーストラリアの学校生活を扱っており,日本の中学生たちも大いに興味がある題材ですね。将来海外に留学するとか,学校同士が姉妹校になっていたり,またはネットを通じて直接対話をしたりすることがあるかもしれません。そのときになってあわてないためにも今から少しずつそのような体験をするチャンスを生徒に与えることが大切だと思います。

 さて,このMini-projectは2時間計画で行われるコーナーですが,まず「聞く」の場面で先生の導入が必要となります。導入の内容は,1 Listenに日本語で書かれている場面設定やタスクの指示などをやさしく英語に言い換えて説明してみてください。

 そこで耳慣らしをしてから指導書にあるリスニングスクリプトをテープまたは先生が読んで聞かせます。何回読んで聞かせるかは生徒の実態に合わせ,充分にリスニングができたと判断したら日本と異なる点をメモさせます。ここの場面はslow learnerにはとても難しいので未完でも良しとします。次にスクリプトを配布します。実はこのスクリプトペーパーを使ってリーディングの練習をすることができるのです。割合簡単なスクリプトなので,1回の先生の範読の後はchorusで音読させ,すぐに黙読に入ります。2〜3回黙読させて,内容をしっかり理解させます。時間があれば先生がこのスクリプトに関するQuestionを作り生徒に答えさせてもいいでしょう。これで理解の程度が明確に分かります。この活動は指導書には特に載ってはいませんが,少しでも「黙読」と「直読・直解」に慣れさせるための活動としてお勧めします。

 次に2 Writeに移ります。この活動には 1 Listenにで聞いた内容(やスクリプトを黙読して理解した内容)を基に自分で考えて書いてみるという,いわば「聞く」「読む」「書く」の複数の技能を一連の活動の中で使用するという「統合的」な言語活動が仕組まれています。まず,教科書に載っているある中学校のホームページを見て,その説明を不完全ながらも口頭で言わせてみて,その後作文するわけです。教科書の指示文にあるように6つのうち2つ以上選ばせますが,上位者には6つ全ての写真の説明文を作文させてもいいでしょう。その際,活動で使える語句がまとめられているIDEA BOXがすぐ下に掲載されていますので,それらの語句を多く使うように,例えばLESSON 8では,18の語句の中から4つ以上使うように指示してください。また同レッスンのGETで学んだ進行形や前レッスンで既習のcan なども使ってみるよう意識して作文させることも大切です。その際,未習語を使いたい生徒がいたら教えてあげてください。生徒は喜んで使います。上位者には和英辞典などを参考にさせてもいいでしょう。しかしslow learnerには机間支援の際,1つでも書けたら褒めてあげてください。大勢の生徒相手で大変ですが,そうした学習到達度に合ったアドバイスも一人一人の生徒を活かす意味でとても大切だと考えます。

 またこの活動は個人の他,ペアやグループでさせることもできます。4人または6人グループで写真を1枚ずつ分担して作文し,それをグループの中で発表し合う活動です。このときにも教え合い,学び合い,助け合いの気持ちが働き,互いに思いやる心が育まれると考えます。ここまでのプロセスを1時間では無理な場合は2時間とっても構いません。実態に合わせてください。

 次に3 Speakにに入りましょう。教科書に載っているホームページの写真を参考に,今度は自分の学校の行事の紹介をするのですが,2 Writeで作文したいくつかの文を基にして口頭で発表させます。これも個人,ペア,グループなど状況に合わせたマルチプログラムを作ることができます。普段積極的に発言しない生徒にも自作の英文を発表させることで少しずつ自信を持たせるいいチャンスとなるでしょう。発表者はスピーキング,他の生徒はリスニングのいい訓練になります。その際,発表者の発音の指導はその都度するのではなく,チェックしておいて発表後に生徒に伝える方がいいでしょう。いちいち矯正していてはその場の雰囲気が壊れる恐れがあります。

 最後に4 Writeは,行事の中から,ホームページで紹介したいものを1つ選び,英文を書かせるコーナーとなっており,応用編と考えていいでしょう。活動としてはかなりレベルが高いので英文の数もあまり無理強いしない方がいいと思います。自分の好きな絵や写真についての紹介なので張り合いがあり意気込んで作文する生徒も出てくるはずです。このような活動は生徒の英語学習のモチベーションを高めるのにかなり効果的です。もちろん先生の賞揚も大切な要素です。上位者は益々英語が好きになるでしょう。そして,これを更に応用したのが最後に出てくるTryです。これまでの活動を集約し,自分の学校のホームページを作成するのが目標なのですが,先生のご都合でそこまで行かなくても次のような活動はいかがでしょうか。

 TryWriteの応用として,先生が下の例にあるようなB5判程度の用紙を配ります。思わず生徒が書き込みたくなるようにするために,自由にイラストや写真を載せられるスペースをもうけ,英文は少なくとも5〜6行とします。生徒それぞれの発想が活かされた楽しい作品を一枚一枚教室に張り出すとか,模造紙に貼り付けそれを廊下の壁面に張って全校の生徒が見られるようにすると生徒の張り合いも一段と増すでしょう。


※クリックでPDFファイルを表示します

 このMini-projectは実に多角的で多彩なアクティビティができるコーナーです。時間はかかってもぜひ有効に活用してほしいと願っております。A先生頑張ってください。

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

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