フーンコラム96回(2013年11月号) 後関正明

たかが指名,されど指名 その1「生徒をやる気にさせる指名の仕方」

 先日都内A校の研究授業にお邪魔しました。授業終了後に発表者のB先生といろいろと質疑応答がありましたが,その中で私は「先ほどの授業で生徒をよく指名していましたが,指名の仕方について何かお考えがあったのですか。」と質問をしました。B先生(教師歴6年)は「特に考えて指名したわけではありません。」と答えてからハッと気づかれ,「何か指名のことでまずかったことがあったのですね。」と続けておっしゃいました。
 私が指名について質問したのにはわけがあったのです。B先生はいち早くそれに気づかれたようなのですが……。ズバリ言って指名の仕方にもうひと工夫ほしかったのです。そこでしばらく指名の仕方について話し合いました。

私 : 指名の仕方については,一般論として次のような要素があります。
  1. 教室内にほどよい緊張感が生じるような配慮が必要だということ。
  2. 質問の内容,難易度などを考慮し,例えば列ごとに指名し,クラス全員にいきわたるようにする場合とランダムに指名する場合を使い分けること。
  3. 個々の生徒の実態をよくつかんでおくこと。できればある程度性格まで知っておくと役に立つ場合があること。(例えばよく挙手する生徒とかまったく挙手しない生徒などの性格など)
  4. 答えた後の先生のフォロー が非常に大切だということ(正解でも間違えても)。特に間違えた場合のフォローは一層大切だということ。
B先生: 1. の緊張感があり,それを一時的ではなく持続させる授業への配慮事項は具体的にどんなものですか。
私 :

B先生のように,オーラルイントロダクションにしても内容の説明にしても,ひたすら聞かせることも必要ですが,タイミングよく質問を発し,座席順に答えさせたり,ランダムに指名したり,または列ごと(前から,または後から,時には斜め)に一人ひとり発話させるドリル的な活動をしたり,指名方法を変えることで緊張感を生むことができます。それは授業への集中力を増し,授業が活性化される元になるのです。
 そして,その時の注意点としてはある程度のスピードが必要です。ゆっくり発問していては一定のリズムが保てません。授業がだらける元になります。私はよく矢継ぎ早の発問をして列ごとに単語や短文,Wh疑問文もまぜながら,時にはターゲット文などを即答させるドリルをしました。基本的にはその時の内容は遅れている生徒にも答えられる平易なものとします。さらに,答えにつまったときはすかさずヒントを出しました。ここで重要なのは,繰り返し言わせることで,どの生徒も正しい発音ができ,リズミカルに英文が言えて達成感を味わわせるように配慮しました。実際,慣れればスムーズにいくものです。特に列ごとの発話はスピーディでリズミカルなので,生徒はぼんやりしている暇がなく,緊張感が持続するわけです。先程の先生の授業ではこのスピードとリズムに不充分だったため,指名された生徒以外はいまひとつ緊張感がないように見えたのかもしれません。

B先生: なるほど。授業には一定のスピードとリズムが必要なのですね。私は遅れている生徒を「おいてきぼり」にしないようにと思って結果的にゆっくりした授業になっていました。
私 :

遅れている生徒への配慮は絶対必要ですが,やり方次第では(彼らを)スピードに乗せることもできるのです。

B先生:

私の授業のスピードがゆっくりなのは,先生に指摘していただいた2.の列ごとに指名する場合とランダムに指名する場合との区別があいまいだったことに原因があったのですね。質問の難易度にも注意を払っていたつもりでしたが,「行き当たりばったり」の質問だったと反省しています。

私 :

やはり50分の授業案をつくるときには,題材や言語材料等を考慮して予め難易度の異なったいくつかの質問を用意しておき,指名にあたっては生徒のレベルを考慮しながら指名することが大切ですね。特にWh疑問文は比較的難しいので注意が必要でしょう。その時,遅れている生徒にはそれに見合った難易度の易しい質問にすると「できた!」「答えられた!」という達成感を味わうには適しているかもしれませんが,反面その生徒なりの進歩も期待されるものでなくてはなりませんから,時にはちょっと高いレベルの質問を投げかけ考えさせて,先生が支援しながら答えを求めることも必要です。

B先生:

ずいぶん細かい授業案が必要なのですね。でも毎時間授業案を考えるとなると大変ですね。

私 :

はい。毎時間とはいかなくても,少なくとも新しい課に入るときは単元指導計画をつくる必要があります。その時その課全体を見渡していろいろと授業デザインを考えます。たとえば「4技能のうちどれとどれを統合させるか」とか「この課は読むことに焦点を合わせよう」など概要を決め,それを土台にし,創意工夫を重ね,いろいろな活動を織り交ぜて授業を構築するのです。そして内容理解のためには質問文を英語で,場面によっては日本語で各レベルに合わせてできるだけたくさんつくっておくことが大切です。それらを時には矢継ぎ早に指名したり,時にはゆっくり考えさせながら答えさせたりしてメリハリのある授業内容にすると生徒は集中するようになります。

B先生:

でも私の場合,そんなにスムーズにいく自信がありません。

私 :

初めはそうかもしれませんが,先生が目指そうとしている理想の授業にするために創意工夫を重ね,リズミカルな授業を意識するだけでもずいぶん違ったものになるはずです。生徒の態度や教室の雰囲気が違ってきますよ。

B先生:

なんとか頑張ってみます。「メリハリのあるスピード感のある授業!」ですね。

私 :

いろいろ試行錯誤をくり返しながら頑張ってみてください。そしてその結果をいつか聞かせてください。

B先生:

次回は引き続き,3.生徒の実態に合わせた指名と,4.先生のフォローの仕方について,さらに指名と評価方法の関係についてもコメントをお願いします。

私 : 了解しました。
 

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。

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