小学校英語活動コラム

 今回は,小学校卒業までに学習させたい「コミュニケーション能力の素地」について,小学校で外国語活動を指導されていた先生に述べていただきます。

小学校英語活動コラムについて »

小学校英語活動コラム バックナンバー »

※このコラムについてのご意見・ご感想をお受けいたしております。
ご意見・ご感想フォーム »

[第27回]小学校卒業までに子どもたちに学習させたい「素地」の程度とは

関 紀子 
(千葉市立稲毛高等学校附属中学校副校長)

1.はじめに

 平成10年度の学習指導要領改訂により,総合的な学習の時間に英語活動が行われるようになった。小学校に英語が登場して今年で14年,外国語活動としては4年目を迎えることになる。

 中学校に入学してくる生徒たちが,同じレベルの英語を身に付けてきてくれたらどんなに入門期がスムーズだろうとずっと考えていたが,そんな願いが実現し始めた。

2.「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」が第一優先

 コミュニケーション能力(communication competence)の中で,小・中学校で育成していくのは,社会言語学的能力(sociolinguistic competence),つまりそのことばが使われている文脈を理解して,場面・目的・話し手と聞き手の関係などの要因に応じて,適切な内容と言語形式に合ったことばを使う能力だと考える。

 英語であいさつしたり,自己紹介したり,英語をコミュニケーションの道具として使う「楽しさ」を味わわせていくことが外国語活動の目標である。「聞いてわかった」「言えた,伝わった」という成就感をたっぷり体験させてほしいと思う。

 中学校では,その意欲を削がないよう小学校でやってきた活動を基に授業を組みたて,無理なく,無駄なく積み重ねていく必要がある。

 ただ,気にかかる点もある。筆者は昨年まで小学校に勤務していたが,外国語活動は数値による評価はしないため,楽しいだけで終わってしまってはいないかという点だ。ドリルもテストもないので,「勉強しなくて(覚えなくても)いいんだ」感がどうも児童にも教師にもある。しかし,中学校に入ると途端に宿題が出され,テストがあり,「英語って漢字みたいに書いて覚えるんだ」と焦ることになり,そのギャップが英語嫌いを作っていく。やはり,「覚える」「定着させる」という意識は外国語活動にも必要であると思う。

3.「聞く」「話す」の素地

 高等学校では,平成25年度から,「コミュニケーション英語I」が必履修科目となり,「授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする」とされた。小学校外国語活動で育成した素地が,中学校で基礎固めされ,高等学校で実を結ぶと言える。

 まず「これだけは」というのが,クラスルーム・イングリッシュ。毎時間の中で繰り返し使うことで定着させてほしい。英語の授業環境を作るには必須のものである。

 小学校の学習指導要領をみると,コミュニケーション場面の例として,「あいさつ・自己紹介・買物・食事・道案内」が取り上げられており,これらは,中学校の言語の使用場面にも取り上げられている。新教材『Hi, friends!』(文部科学省)を使って,この5つの場面で使える基本的な表現は身に付けさせてほしい。正確さやまとまりは,中学校で補充・深化していくので,基本的な単語や文等の言語材料だけは覚えてきてくれるとありがたい。外国語活動の素地を踏まえ,一歩進んだ中学校の授業を進めていくには,小学校での定着度が重要な鍵となってくると思う。

 そして,活動を通して,次の技能や態度は身に付けさせてほしい。

「聞くこと」
 ・相手の言うことを興味・関心を持って,しっかり聞こうとする。

「話すこと」
 ・大きな声で,元気よく,はっきりと言う。
 ・相手の目を見て,表情やジェスチャーを加えて,自分の考えを伝える。

 以上のような技能が身に付いていれば,Q&Aやインタビュー活動,スピーチを中学校でもスムーズに行える。

 なお、「書くこと」については,外国語活動にはないが,「書くこと」への抵抗を少しでも緩和するために,ローマ字は小学校で確実に定着させてほしい。小学校学習指導要領の国語には「第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,また,ローマ字で書くこと」とあり,中学校での自己表現活動(スピーチ原稿等)の中で,ローマ字は大変役に立つからである。

4.おわりに

 「英語が使える日本人を育成する」という大目標に向けて,まずは中学校区の小・中学校が「中学校につなげるために…」「小学校の素地を生かして…」という視点で本気で向き合う時期にいると思う。

印刷用ページを表示

このコラムへのご意見・ご感想をお待ちしております
メールでのお返事はいたしませんが,いただいたご意見・ご感想は,
お名前は出さず,次号以降のコラムに反映しお答えしていきます。
お名前 ご意見・ご感想(全角/必須)
お住まい
所属
(学校名など)
E-mail

※ご意見・ご感想のみのご記入で送信できます。
よろしければ,お名前,お住まい,所属,E-mailもご記入ください。

小学校英語活動コラム バックナンバー


1つ前のページへこのページのトップへ

 
英語教育インフォメーション
英語教育コラム
英語教育リレーコラム
フーンコラム

小学校英語活動コラム 英語教育関連書籍
三省堂辞典一覧:英語新しいウィンドウに表示
幼児・小学
教室・教師向け
研究会情報
小学校英語活動
中学校英語教科書 ニュークラウン
高等学校英語教科書