フーンコラム 第25回 後関正明

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宿題をやってこない生徒たち

 先日,こんなメールをいただきました。「私は2年生3クラスと3年生2クラスを教えているのですが,3年生はともかく,2年生が宿題をやってこないのです。あるクラスでは3分の1しかやってこないのです。他のクラスも似たりよったりです。いろいろと方法を変えてやらせるようにはしているのですが…もう本当に困りました。何か名案はないものでしょうか。」

 この「宿題」に関する相談は本当に多いですね。以前も2回にわたって取り上げたのですが,それ以降,何度も同じ悩みを聞きます。学期も終盤にさしかかりつつありますし,ここでもう一度,「宿題をさせる」という観点から,「宿題」について考えてみましょう。

 まず,生徒に宿題をさせるためには,「まず,どうして家庭での学習が必要なのか」ということに対する理由を丁寧に説明して,納得させる必要があると思います。では,何故,家庭学習は必要なのでしょうか。

 英語と日本語は,文の構造,語句や表現方法がまったく違う言語です。だから,基本はきちんと覚えなければならないのです。つまり,「記憶する」という作業が絶対に必要なのです。英語(言語)に関する記憶は,毎日,少しずつでも連続して触れていることによって蓄積されていき,それをしないことで,せっかく学習したことも忘却していってしまうものです。現在,学校では英語の時間がない日がありますね。ともすると2日も3日も英語のない日が続くときがあります。家庭学習をしないことにより,実は,その間に,せっかく学んだことの忘却が進行し,学習効果が下がってしまっているのです。ですから,せっかくの学習を無駄せず,効率的に英語の基本を蓄積していくために家庭での復習が必要なのです。

 次の段階として,「家庭学習をしなさい」と言われても,生徒の側からすれば,具体的にどうしたらいいのか分からないときがあります。そこで,「宿題」の出番です。「宿題」は,授業で勉強した大切なことを理解して,きちんと覚えてほしいと思う事柄で構成されます。すなわち,それは,先生が勉強のポイントとして指示したものなのです。だから,「宿題」をすることにより,大切なポイントが効率よく蓄積されていくのです。そして,だんだんと英語ができるようになります。

 では,具体的な「宿題」ですが,生徒が義務的ではなく,進んでやろうとするようなものを工夫するといいですね。宿題の定番は,(1)本文を5回読ませる,(2)本文を5回書かせる,(3)教科書の練習問題をやらせる,(4)自作の問題(英作文・英問英答・文型練習等)をやらせる,などですが,ここでは,NEW CROWN 2年生 LESSON 7 Section 1を終えた後の「宿題」を例にとって,さらに工夫を加えてみましょう。

◎NEW CROWN 2年生 LESSON 7 Section 1後の「宿題」例
(i) 55ページのLET’S COMMUNICATE 1のCを,1題だけでなく,2〜3題やるようにさせる。その際,既習の語句を活用し,play soccer,play the piano,study Hangul,paint a picture,read a storyなどのヒントを与える。
(ii) 対話を過去形にする。
  A: What did you enjoy last Sunday?
 B: I enjoyed swimming. Swimming is a lot of fun.
(iii) 同様に既習の語句を使って過去形で自分の好きな文を作らせる。
(iv) LET’S COMMUNICATE 1のCをさせるときには,必ず絵を描かせる。(英語が苦手な生徒でも,絵は喜んで描くので,そこを褒めて学習の動機付けにしたい。)

 留意点として,上記(ii),(iii)は強制せずに,「発展学習」としてもよいと思います。蛇足ながら,「宿題」の大切さは学年当初の授業時に絶対に守る約束事として,生徒に周知徹底させておくことが肝心ですね。

 相談された先生が担当されている2年生はちょうど中だるみの学年です。なんとも教えにくい学年の上,言語材料,すなわち文法項目がとても多い学年でもありますね。さらに,生徒たちもそろそろ2極分化,すなわち興味を持続させる者と失う者とに分かれる頃です。授業そのものだけでもしらけてしまいがちです。そういう生徒たちを引っ張っていくのは容易ではありません。しかし,ここはふんばって興味と関心を持たせ,それを持続させるように,以上のような工夫をしてみてはいかがでしょうか。

関連リンク
第18回 「家庭学習はどうしても必要ですか? ─その2─」 (2005/4/25)
第17回 「家庭学習はどうしても必要ですか?」
 (2005/3/28)

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後関 正明 (ごせき まさあき) 先生

東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より都内の私立大学で教職課程履修の学生を教えている。

フ〜ンコラム バックナンバー (第1回〜)

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